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サブリース契約の効果検証 ~要注意なのは〇〇な時~

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2020年6月12日に不動産業者に対する新しい法律が成立しました。「賃貸住宅管理業法」というものです。この法律のポイントは2点あります。「サブリース業者に対する規制」と「賃貸住宅管理業者に対する規制」です。本稿はサブリースについて、通常の賃貸している賃貸物件との実際の比較や、そのメリット、デメリットなどについて検証いたします。前半は事例研究ですので、要点だけまとめて理解したい方は後半の「サブリースのデメリット」からお読みください。

目次

  • トラブルの絶えないサブリース契約
  • サブリース契約の健全化と増加
  • 一部上場企業の決算資料から読み解くサブリースによる収支
  • 存在感が高まる不動産事業
  • サブリース契約による増収≒家主の減収
  • 予測サブリース率 20%
  • サブリースをしなかった事例の実際の空室率 5.7%
  • サブリースのデメリット
  • サブリースのメリット
  • 一般的な管理委託契約における利便性の向上
  • 修繕費用についての誤解
  • 「不動産投資の一番うまみのある時期」とは?
  • サブリース料金の減額提案が”ない”場合こそ要注意

トラブルの絶えないサブリース契約

「かぼちゃの馬車」に代表されるような、建築した不動産業者と所有者の間で締結されることの多いサブリース契約は以前から多分に問題視されていました。建築業者はより高額でより高い利益を確保するために、利益を度外視した価格でサブリース(借り上げ)し、建築工事が終了し利益が確定した段階で、そのサブリース契約を一方的に改定してしまうという手法が横行していました。一連の「かぼちゃの馬車」の事件においてはサブリース業者の破綻により、その問題点が顕在化した事例です。

通常の個人対法人などの商取引においては、消費者契約法により、消費者である個人は不当な契約から一定程度保護されています。しかし、不動産の貸主であれば、個人であっても消費者とはみなされないこともあり、この消費者契約法による保護対象から外れてしまうことがあります。ここにこのサブリース契約の問題点があるとも言えます。賃貸事業には民法や消費者契約法など様々な法令が複雑に関係しているので、この点投資家といえども理解が難しい点があるのかもしれません。

サブリース契約の健全化と増加

前記の賃貸住宅管理業法の成立により、サブリース契約を締結する業者には様々な説明責任が課されることになりました。借り上げ賃料の将来的な減額リスクなどの提示義務や、横行していた誇大広告などが禁止事項となりました。結果、悪質な業者や、契約自体は減少しているものと思います。

現場の肌感覚ですが、悪質な契約が一掃されることにより、サブリース契約はむしろ増加してきているように感じています。その要因は大手ハウスメーカーによる借り上げです。大手ハウスメーカーは近年、個人住宅の受注件数が減少する中、その対応策として投資用の共同住宅建築及び、建築後の管理業務に活路を見出しているようです。建築受注による利益率低下の穴埋めとして、不動産事業に積極的に進出してきています。事例をもとに次項にて次項にて検証いたします。

一部上場企業の決算資料から読み解くサブリースによる収支

下の資料は業界最大手の一社である超有名ハウスメーカーの決算資料からデータ抽出したものです。

順調に不動産事業が伸びている一方、賃貸住宅、戸建住宅ともにの売り上げ減少傾向が見て取れます。同社の定義によると、不動産事業とは不動産の転貸借、管理、運営及び仲介等を総合的に取り扱う事業としているようです。実際、賃貸の現場レベルの見解としても同社にて建築された物件のほとんどはサブリースされていると感じています。

営業利益ベースでみると傾向はさらに顕著となります。建築部門の営業利益の減少は、同社にとってかなり大打撃となっている模様です。参考にしたのは2021年1月末時点での決算資料ですので、輸入木材の価格が高騰した「ウッドショック」はもちろん、ウクライナ情勢による円安や各種原材料の高騰などは当然含まれておりません。最新の決算発表でこのあたりがどの程度影響を及ぼしてくるか予想が難しいです。しかしながら、不動産事業にとってはそのあたりの影響はほとんどないものと思われ、引き続き堅調に伸びていくものと思われます。

存在感が高まる不動産事業

同社にとってはこの安定性はとても貴重なものと感じられているのではないでしょうか。2018年時点では総営業利益の17%ほどだった不動産事業は現在23%にまで到達しています。昔は建築で利益の先食いをするために管理は無償で行う、ということを行う業者が多くありました。結果、問題視されたようなサブリース契約の不当な値下げ圧力や一方的解除という問題を同時に生んでいました。そのような悪質な業者は一掃され、健全な 商行為としてのサブリースが急速に普及しつつあるのが現状なのだと思います。

サブリース契約による増収≒家主の減収

大手ハウスメーカーにとってはサブリース契約を始めとした不動産管理業はまさに虎の子になりつつある存在のようです。それらがこれだけの安定性と高利益をもたらしているということは、裏返すと、そのぶんだけ建物所有者は割を食っているといえるのかもしれません。サブリースをするから家賃そのものが上昇するというようなwin-winな関係はありません。賃料の決定には他の家主などによる自由市場の存在がある以上、その市場原理の下では賃料とサブリースの間柄はゼロサムの関係にあります。つまり、サブリース業者の利益≒建物所有者の損失といってもいいものなのかもしれません。

予測サブリース率 約20%

そもそもですが、サブリースされる場合は以下のような計算式で借り上げ賃料が決定します。経験則上、サブリース率の相場観は15~20%ほどだと考えていました。地域によりこの粗利率の設定は当然に異なるでしょうし、物件の立地や間取り、築年数などでも当然に変わってくることと思います。上記の大手ハウスメーカーの決算書データから読み解く限り、不動産事業部の営業利益率と販売管理費等の経費率から予想できる不動産事業の粗利率はおおむね20%~25%のようです。

サブリース事業の粗利益とは、すなわちそれは上記計算式におけるサブリース率です。もちろん不動産事業のすべてがサブリースによる売り上げではないことは明白ですし、同じように、事業部ごとで売上に対する販売管理費等の割合も異なります。あくまでも解像度のとても低い推察である点ご留意ください。ただ、現場の感覚としては同社の貸し出し物件のほとんどはサブリースされているものであり、一般的な管理契約で募集されているものはほとんどありません。事業のほとんどがサブリース案件であるという前提であれば、不動産事業部の粗利率はサブリースとしての粗利率と大きな差はないと思います。

サブリースをしなかった事例の実際の空室率 5.7%

弊社にて管理委託契約を締結いただいていて、且つ、サブリースではなく一般管理を選択した物件の空室率を検証した結果が以下のデータです。2018年以降に完工し賃貸開始したものを選択しました。この場合における空室率とは以下の計算式としています。
満室想定価格 × 空室率(%) = 賃料収入
サブリースの場合と同じく、満室想定と実際に受益した賃料収入との差額のこととしています。
≪事例A≫
新浦安駅 徒歩13分 1R10世帯 大手ハウスメーカー施工
≪事例B≫
浦安駅 徒歩10分 1R18世帯 大手ハウスメーカー施工
≪事例C≫
新浦安駅徒歩9分 1R6世帯 ローコストメーカー施工
≪事例D≫
新浦安駅徒歩10分 1R6世帯 ローコストメーカー施工
≪事例E≫
新浦安駅徒歩8分 1LDK4世帯 大手ハウスメーカー施工
≪事例F≫
新浦安駅徒歩14分 1R12世帯 大手ハウスメーカー施工
≪事例G≫
新浦安駅徒歩9分 1R6世帯 ローコストメーカー施工
≪事例H≫
舞浜駅徒歩20分 1R10世帯 中堅賃貸物件建築専業メーカー施工
≪事例I≫
舞浜駅徒歩20分 1R10世帯 中堅賃貸物件建築専業メーカー施工

上記物件の空室率平均は5.7%であり、管理料率としての相場である5%を乗じたところで、到底20%には及ぶことはありません。唯一事例Gだけが15.1%と空室率が高くなってしまっていますが、この物件の空室率は新築された季節が悪く、初期の稼働率が低いことが原因となっています。事例H及びIも同様です。直近の稼働率は大幅に改善傾向にあり、稼働期間が長期になれば空室率は低下する傾向にありそうです。そして、サブリースを選んでいたとした場合の最大減収額は、Bの事例で540万です。36か月で540万なので、月換算15万円もの損失が発生していたことになります。後述しますが、この月額賃料の差額損失額だけでなく、更新料などの賃料以外の売上項目の減収もあります。

サブリースのデメリット

サブリースのデメリットとして明白なのは、上記の賃料減収を代表とした様々な項目での減収です。本来得られるはずだった利益を喪失するのは賃料差額だけではありません。サブリース契約においては礼金や更新料などの賃料以外の収入も全てサブリース業者の売上として計上され、建物所有者には支払いされないことが一般的です。一昔前に比べて、新規契約時の礼金による収入は減少傾向にありますが、好条件な物件であればまだまだ取得可能な状況が続いています。新築住宅であればなおさらです。弊社の直近の事例においても新築物件や築浅物件において、礼金が0というケースはひとつもありません。
更新料についても同様に、サブリースを選択した場合サブリース業者の収入となります。更新料については2年で賃料の1か月程度の収入を受け取ることができるケースが多いです。仮に家賃が8万円だとした場合、2年間で得られる更新料収入は月換算すると3000円を超えます。賃料に対して4%ほどとなります。一般的な管理委託契約の料金が5%であることを鑑みると、高額な利益損失だといえます。
また、サブリース会社による賃料の免責期間というものもあります。一般的には完成後3ヵ月間はサブリースとしての賃料支払いがなされないとされることが多いです。つまり、建物が完工し、建物代金の支払いが完了(ローンを組んでいる場合ローン支払いの発生)していた後3ヵ月無収入となります。新築物件の多くは完成引渡と同時に入居開始(=賃料受益開始)するケースも多い中、事業の走り始めの時期での確定的な減収は厳しいものがあります。
このように、実態としては巧妙な形でサブリース会社に有利な契約内容となっていることが多く含まれていることがあります。逆説的にいうと、それらの利益がすべてサブリース業者の売上の源泉となっているからこそ、先に挙げた大手ハウスメーカーの事例のように増収増益を果たすことができているともいえるのかもしれません。

サブリースのメリット

経済的にはサブリースのメリットはなさそうですが、デメリットばかりではありません。サブリース率が非常に良い条件で提示を受けることができる場合もあります。この場合、上記の金銭的なデメリットが少なくなり、安定的かつ高収益なサブリース契約というものを確保できることもあります。ただ、サブリース業者としても最初から好条件を提示してくることは少ないものです。サブリース業者以外からの賃料査定をうけ、適切に相場観などの理論武装をすることで、より高値を引き出すことができる可能性が高まります。この場合、前記のように礼金や更新料など、本来見込めていた収入が含まれていないことがありますので、詳細な検討が必要です。
また、空室率にかかわらず常に安定的な入金が確約されているということはこれだけで十分なメリットです。入金が1本のみであり、額も均一であるために、会計処理も容易となります。所有資産が膨大であり、その会計処理だけでも多大なコストが発生してしまう、あるいは忙しすぎて個別の清算書などに対応することができない家主様にとっては魅力があるのかもしれません。

一般的な管理委託契約における利便性の向上

ただ、近年一般的な管理委託契約(サブリースではない)においても会計的な利便性は受けられるようになってきています。一般的な管理委託契約において、家賃の収納代行などのサービスは一般化しています。昔はわざわざ銀行に記帳しに行って、入金が確認できない入居者に督促をしたりするといった業務を個人で行っていた大家さんは多いですが、今ではそれらの業務を全て管理委託契約の中で不動産業者に委託することが増えています。貸主としては通帳記帳も不要で、月に一度送られてくる月次報告書を確認するだけとなっています。

修繕費用についての誤解

建築後の修繕費についての負担をメリットとして想起する方もいるようですが、これば間違いであることが多いです。建物が不具合発生した場合、一般的には建物所有者に修繕義務があります。そして、それはサブリースであろうがなかろうが、その負担を建物所有者が負うものです。引き渡しを受けた建物設備の所有権は建物所有者にあり、サブリース業者にはないからです。一部の消耗品についてサブリース業者がサービスとして負担をするケースはあるのかもしれませんが、完工後間もなくそれらの消耗品が原因で不具合を起こすことはほとんどありません。あったとしても、建築業者の補修義務を問うことができる場合が多く、どのみち建物所有者の費用負担は発生しないことが多いです。もちろん、建築会社との契約により、上記の対応とは異なるケースがありますので、契約内容の詳細をご確認ください。

「不動産投資の一番うまみのある時期」とは?

ちなみに、新築してから10年?15年で転売を繰り返すオーナーにその投資方針をご教示いただいたことがあります。その方々は当然にサブリース契約は選ばないのですが、転売する理由は「築年数が10年未満が一番賃貸業としての利益が受けられる時期であり、築年数が古くなればなるほど修繕費などのコストが上がり、利益額が薄くなる。新築から築浅と呼べる時期が一番のうまみ。」と考えていました。自己所有の不動産に愛着を持たないドライな手法ではありますが、一つのポリシーとしては参考にできるかと思います。そして、転売するつもりのない不動産を所有していたとしても、この考えから学べることは多分にあると思います。

サブリース料金の減額提案が”ない”場合こそ要注意

サブリース契約を締結している建物所有者様からご相談いただくケースの多くは、契約更新時に料金改定などの交渉を受けたタイミングです。そう言ったケースというのは、サブリース業者が赤字ぎりぎりの運営をしていて継続が難しいからこそ、改定を機に減額交渉をするに至ったのだと思います。裏を返すと、建物所有者にとってサブリース契約をしていることのメリットが出ている状態といえます。もし、再提案された改定料金に納得がいかなければ、単純な話で適切に他業者に相談を求めるべき状況です。
しかし、本来サブリース契約の解除を本当に検討すべきなのは、サブリース業者から借上げ賃料の減額交渉を受けていないケースだと思います。前記のケースとは逆で、料金改定を申し出してこないということは、サブリース業者に十分な利益が確保できている状況とも言えます。つまり、建物所有者にとっては本来受益できていた利益の多くを喪失している可能性が高いとも言えます。
一般的な管理委託契約は貸主にとってはパートナーという関係性にあります。建物所有者にとっての賃料収入の増額は管理業者にとっても増収となり、利益を共有しています。一方、サブリース契約というものにおいては全く異なります。建物所有者とサブリース業者とは賃料を払う立場と受け取る立場であり、明確に利益相反の関係にあります。常に交渉相手であるという認識をもち、適切な対応をしていく必要があります。怠れば、それはすなわち自らの利益損失に直結します。ラクをするためにサブリース契約を選ぶ方もいらっしゃるようですが、その実際はラクなように見えてなかなかラクなものではないのかもしれません。
以上のメリットとデメリットを総合的に勘案し、サブリースという契約手法について詳細にご検討されることをお勧めいたします。

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ライターについて

資産活用部 今泉向爾

不動産業界には海千山千の人間が多くいます。私もこの業界にいることでオモテヅラだけがいいと感じる人に多く会ってきました。時に人を信じるということはとても大事ですが、その人がどのような状況に身を置いている人なのか、そして自分が今どのような状況に置かれているのかを冷静に俯瞰することで、より良い不動産取引体験につながることと思います。今回のコラムを読んだ方が一人でも不幸な不動産体験から縁が切れることを願って止みません。

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