代表取締役社長 今泉 向爾
誠実に、地域と人のために
私が明和地所に入社したのは2006年。いわゆる“ミニバブル”と呼ばれた時期でした。不動産市況も活況を呈し、多くの企業が拡大志向に動いていた中で、私自身も大きな期待と緊張感を胸にこの業界に飛び込みました。しかしその後すぐにリーマンショックが起こり、市場は一変します。業界全体が厳しい局面に立たされる中で、私たちも現場で一つひとつの判断や対応が問われる毎日を過ごしました。ようやく回復の兆しが見えてきた頃、今度は東日本大震災。人々の「住まい」に対する考え方や優先順位が、大きく揺さぶられた時代だったと感じています。
そのような経験を経て私が強く思うのは、「変化に直面したとき、企業として、個人として何を守り、何を変えるのか」が問われ続けているということです。社会や経済の変動の中でも、常に変わらずに大切にすべきは、目の前のお客様への誠実な向き合い方。私たちの仕事は、ただ物件を紹介することではなく、「この人に任せたい」と思っていただける信頼を積み重ねることだと考えています。
業界の信頼を取り戻すために
スマートフォンやSNSの普及により、かつてあった不動産の情報格差は少しずつ縮まりつつあります。しかしその一方で、業界全体や担当者に対する不信感や偏見はいまだ根強く残っています。誰もが一度は関わる可能性のある不動産取引において、必要とされるのは、正確な情報だけではありません。状況を丁寧に読み解き、お客様にとって最良の判断を支える“人の力”が、これまで以上に問われていると感じます。
『業界を変える』なんて、大きすぎる目標かもしれません。でも、大きすぎる目標だからこそ、目の前のお客様と一つずつ丁寧に向き合い、その積み重ねで少しずつ信頼の土台を築いていく。その継続こそが、変化を生む唯一の道だと信じています。
地域とともにある誇り
明和地所には、「地域のため、人のため」という価値観を大切にしながら、実直に働く社員がたくさんいます。物件を紹介するだけでなく、お客様の人生の選択に寄り添い、街の情報を正しく伝え、時にはライフプラン全体に思いを馳せながら提案を行う。こうした誠実な仕事の積み重ねが、私たちの誇りであり、未来への希望でもあります。
地域の暮らしに根ざす仕事
街を歩いていて、ふと「あの物件は数年前に担当したお客様の家だな」と思い出すことがあります。オフの日にスーパーでばったり声をかけられたり、地域のお祭りに参加すれば、あちらこちらに顔なじみの方々がいて、自然と会話が生まれます。
そうした交流をきっかけに、「またお願いしたいんだけど」と、再びご依頼をいただくこともあります。あるときは、地元の居酒屋でたまたま隣り合った方と話が弾み、そのご縁から「住まいの相談をしたい」とご連絡をいただいたこともありました。
こうした日常の延長にある出会いや再会は、私たちの仕事が地域と深く結びついていることを改めて実感させてくれるものです。
それは、単なる“住まいの取引”にとどまらず、人生の選択や節目に寄り添い続ける責任と喜びを伴う仕事です。「住まいを通して夢を実現する」という企業理念は、まさにこのような日々の積み重ねの中で息づいています。
暮らし全体に目を向けて
そうした姿勢は、会社としての取り組みにも反映されています。たとえば、フリーペーパー『浦安に住みたい!』や、『ゆうゆう手帳』は、不動産という枠を超えて「街の魅力を届けたい」「人と地域の接点になりたい」という想いからスタートしました。今ではたくさんの浦安のお店や企業に協力していただきながら市民ライターの皆さんとともに運営し、浦安に暮らす多くの人々にとって、日常の情報源となっています。
私たちはこれからも、「住まい」だけでなく「暮らし」全体を見つめる視点を持ち続けます。お客様の声に耳を傾け、街の変化に敏感であり、関わるすべての人との関係性を大切にする。それこそが、私たちが掲げる「四方よし(顧客・社員・会社・地域)」という価値観の実践だと考えています。
当事者として地域に向き合う
不動産業界を取り巻く環境は、今後ますます複雑になっていくでしょう。テクノロジーの進化、価値観の多様化、働き方や家族構成の変化。そうした時代のなかで私たちができることは、小さな挑戦を続けることです。やってみて、振り返って、改善して、また動く。その繰り返しの中で、社員が育ち、組織が深まり、お客様や地域との信頼が積み重なっていく。
会社の未来は、誰かがつくってくれるものではありません。今ここにいる私たちが、どれだけ当事者意識を持って、地域と人に誠実でいられるか。その積み重ねだけが、企業の価値をかたちづくっていくのだと思います。
一人でも多くの方に、「この会社と出会えてよかった」と思っていただけるように。これからも、街と人に必要とされる存在を目指し、明和地所グループ一同、歩みを止めずに進んでまいります。