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遺言状の必要性と書き方

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(1)なぜ「遺言状」を書く必要があるのか?

日本の相続法は、「遺言状があることを前提に書かれている」のですが、「遺言状」を書く人が 20%しか居ないから、残りの80%の遺言状が無い遺産相続では争うことが多くなっているのです。何故なら、「遺言状が無い場合」には、「法定相続人(相続人となる者)」と「法定相続分(各自が相続する分)」を法律で、しかも「同順位は均等に相続する」と定めているのを知っていて「各相続人は法律に定められた均等な相続分を貰えるものと考えています」ので、各々の主張の食い違いから遺産相続の争いが多くなっているのです。

そこで、「あなたは、遺言状を書いていますか?」と聴くと、ほとんどの人が遺言状を書いていません。「どうして書いていないのですか?」と聴くと、「うちはそんなに財産が無いから」「子供達は争ったりしないと思うから」等々がほとんどの答えです。

しかし、現実には遺産の多い少ないにかかわらず父死亡の後では確実に遺産分けの争いは増えています。それは、子供達は、法律で「子の相続分は、各2分の1とする」等々と書かれているので「自分には遺産を受け取る権利がある、と知っている」が「生きている父の前では遺産分けの話はしにくいので黙っているだけ」だからです。

そしていざ親(父)が死んだ後の遺産分けになって「遺言状」が無いと、法定相続人(子)の1人が遺産分けになった時、「この家が欲しい」等々と自分の主張を始めると他の子供達もそれぞれの主張をすることになり、子供達の間で調整できない争いになることが多いのです。

一度遺産の争いになると骨肉の争いに発展してもう二度と親子・家族関係は元に戻ることはない悲惨な関係になってしまいます。ですから、残された妻子が争うこと無く、それぞれの生活と幸せを願う親の想いを込めた「遺言状」を書くのは親の義務である、と心得る必要があります(「付言」で親の子に対する想いを書くのはその為です)。

(2)では、「どのような遺言状を書けばいいのか?」

相続は、親の遺産(プラス・マイナスの財産)を子孫へタダで移転(地位の承継)をすることですので、「遺言書」は、「残された子孫に対して、それぞれが生活を立て、幸せに生きていけるように、親がどういう気持ちで相続させるのかを文章で書き残すものでなければなりません」

そして、相続人(妻や子孫)は、親の配慮に対して感謝を持って受け取るものでなければなりません。 親の子に対する配慮が「付言」で書かれていたら、争う子供はほとんど居なくなる、と思います。以下に幾つかの事例にしたがってサンプルを書きますので参考にして下さい。

(3)子供の居ない夫婦の場合

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子供が居ない夫婦の場合、一方が死んだ場合「遺言状」が無いと、相続法によれば「法定相続人(相続分)」は「配偶者(2/3)と被相続人の親(1/3)」、親が居ない場合は「配偶者(3/4)と被相続人の兄弟姉妹(1/4)」になります。

夫婦二人で築いて来た財産が、「ほとんど行き来の無い兄弟に1/4持って行かれるのは不合理だ」と思われる人は、上記のような「遺言状」を書けば、配偶者1人に遺産を残すことができますので、子供の居ない夫婦は必ず「遺言書」を書いておく必要があります。

※子供が居る場合でも、残された妻に全財産を残したい時には、上記の内容の「遺言状」を残 せば良いのです。 95歳迄老いた妻が住み慣れた我が家で過ごせるようにしておけば、妻亡 き後は財産は子供達に相続されますので「子供達への遺産分けは、母親に親孝行しながら少 し待て」と言うことになります。この場合1億6,000万円までは無税(節税)になります。

※ 「自筆証書遺言」は、上記の内容を、「自分だけの手書き」で書いて下さい(ワープロで書くのは無効)。その下に「年月日」と「住所氏名」を書き「実印」を押捺して下さい。
・ 夫婦共同名義は無効です。
・ 書いたら、封印して、遺言執行者に渡すか、信頼できる人に保管して貰って下さい。
これだけで完全に有効です。 但し、紛失したり、書き換えられたりする恐れがありますので、保管にはご注意下さい。

※ 尚、完璧な遺言状にするには、この自筆証書遺言を持って、「公証人役場」に行き、「公正証 書遺言」として書いて貰えば、完璧です。費用は、証人二人分と合わせて2万~3万以内でできます。「公正証書遺言」にすれば、1部は公証人役場に保管されるので、自分の分を紛失しても大丈夫です。

又、「自筆証書遺言」のように書き換えられる危険もありませんし、家庭裁判所の「検認」を受ける必要もありません。ちなみに「検認」は、この遺言書が本当の被相続人が書いたものであ るかどうか等の調査をするものです。又、検認をしなかった場合、遺言書が無効になるわけではありませんが、行政罰の「過料」が来ることがあります。

(4)子供二人、自宅と賃貸物件と預貯金、株式等がある家族の場合

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「自筆証書遺言」の書き方について

  1. 不動産は、登記簿謄本の通りに書く。 不動産の「所在地」は、「住所」とは違うもので、土地建物台帳に記載された「所在地」を書くこと。
  2. 実際の遺産分けの時には、時価総額での損得判断になりますが、相続税の計算では、不動産の相続税評価額は、「時価評価」ではなく、土地は「路線価」、建物は「固定資産評価価額」で評価します。
  3. 不動産の相続税評価額を知りたい場合は、固定資産課に行って、「固定資産評価証明書」を取得し、① 建物はそこに書かれた価額+②土地の路線価(固定資産評価価額×8/7)   の合計額で計算することで、土地建物の相続税評価額の概算を出すことができます。
  4. 預貯金や株式の評価は、時価評価そのままの価格です。
  5. 上記のように、不動産の相続税評価額は、時価よりも低いので、相続税の節税対策に活用されています。・例えば、1億円の現金がある場合、そのお金で自宅や不動産賃貸物件を建てた場合、新築建物の固定資産価額は70%~55%で評価されるので、相続税評価価格は7,000万~5,500万に下がります。
    ・更に、自宅を建てた場合には、宅地の評価がの80%控除の特例により、路線価が4,000万×20%=800万の相続税評価に下がるので節税対策にもになります。
    ・不動産賃貸建物を建てた場合は、宅地の相続税評価額の50%評価の特例により=4,000万×50%=2,000万に下がるので節税対策にもなります。
  6. 上記のように、不動産は相続税評価が時価では無い為、又、その他幾つかの特例がある為、相続対策によく活用されるのです。

※不動産は分割が難しいし、その活用次第で経済的利益が異なるものです。それ故その分割方法が、不動産知識が少ない者には難しい、と言う特徴がありますので、相続人間で揉める素にもなっています。不動産の活用と揉めない分割方法等に詳しい、且つ相続にも詳しい不動産業者や税理士に相談の上、将来対策と相続対策になる「遺言書」を作成されますことをお勧めします。

(5)不動産収益物件を多くお持ちの場合

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不動産に関する相続の考え方が一番難しいので、相続に詳しい不動産業者と税理士の両方に協力して対策をお願いするのが一番利口なやり方です。

①不動産はその価値を引き出す方法を知らないで、節税対策だけ考えた場合は、失敗することが多い。

例えば、銀行や建設業者が奨める「借金して賃貸物件を建てると節税になる」は、危険な誘いです。 1億円借りて、アパートを建てた場合、確かに節税になりますが、それは1億円借りたから節税になるのでは無く、手持ちの1億円でアパートを建てた場合にも節税になります。図示しますと、1億円借りると、1億円が手元の入りますので、お金に関しては±0です。

詳しく言いますと、前述したように、現金を賃貸建物に替えたから「建物の相続税評価額」が現金の70%~80%低い評価になる(特例の場合更に50%評価で35%~40%に下がる)のでその分だけ節税になるのですが、その場合でも借金の1億は返済しなけれならないものとして残るので、空室が出たり、賃料が大幅に下がったりした場合、借入金でアパートを建てた人は返済に苦しみ、財産を失うか、破産する危険があるので用心して下さい。

②中古の賃貸物件を買えば大きな相続対策が取れます

上記の理屈で、「不動産の相続税評価」と「不動産の生前贈与税の評価」は同じ基準ですので、これを活用して中古の賃貸物件を買えば大きな相続対策が取れます。

例えば、土地60坪・建物110坪・月収90万の築21年の木造中古賃貸物件を手持ちの現金13,500万(利回り8%)で取得すれば、建物の固定資産評価価格は減価償却の計算で値下がりしていきますので、新築時8,000万だった建物の固定資産評価額は500万位です。(土地の固定資産評価額が6,000万×8/7)×50%評価+建物評価額500万=6,857万×50%+500万=3,428万+500万=3,928万(相続税評価額)です。年間1,080万のアパートが相続税評価額では3,928万ですので、1億3,500万のお金から相続税評価を9,572万安くすることができました。

③手持ちの中古アパートの建物だけを子供に贈与

手持ちの中古アパートの建物だけを子供に贈与すれば、年間1,080万のお金が入るアパートを500万の価格で贈与できることになりますので、跡取り息子等に(500万-110万)×15%=わずか585,000円の贈与税で引き渡すことができます。

※尚、この贈与の時に、敷金も子供の贈与しないと、負担付き贈与として時価評価の贈与と見做されますのでご注意下さい。

④広い土地に道路を引いて不動産を幾つかに分割をして、それを数人のお子様達に相続させる事を遺言される地主さんの場合

「土地は公道又は道路と見なされる道路に2m以上接続していないと家が建てられません」ので、私道(公衆用道路)の設計の仕方で「家が建たない土地」を造ってしまうことがあります。「家の建てられない土地はほぼ無価値」ですので、道路幅は最低4.5m以上、公道に接する部分の隅切りは3m以上必要な「道路位置指定」の取り方など不動産業者に相談の上で「遺言状」をお書きになることをお勧めします。

相続土地分割事例1

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※事例 3の場合
前述したように、「道路位置指定」を取った私道(公衆用道路)を取らなければ、A、D、E の土地は「家が建てられないほぼ無価値な土地」になります。仲の良い兄弟の間は良いとしても、孫子 の時代になれば何十人という人数になるので、話し合いが付かない収拾が付かない土地にな るので、親が生きている今の内に、兄弟で話し合って「道路位置指定」を取り、兄弟で土地の分 筆・分割の手続きをする「遺産分割協議」をする必要がある。

両親が生きている内ならば、「道路位置指定」を取って土地の分筆を行い、「それぞれの土地をそれぞれの子に相続させる」と言う「遺言書」を書くのが親の子孫に対する思いやりであり、義務でさえある、とさえ言えると思います。

以上、「遺言書」について述べてきましたが、相続では不動産に関する知識が一番必要とされますので、更に具体的なご相談を相続に詳しい不動産業者や土地家屋調査士に相談された後で遺言書を書かれますことをお勧め致します。

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